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眼の手術について

涙の通り道をつくる手術

昨年11月、涙道の疾患に長けた群馬県前橋市宮久保眼科理事長の宮久保純子先生を当院にお招きし、涙管チューブ留置術をお願いしました。当院では年間約5件前後の手術をしてきましたが、今回は長いこと涙嚢炎や涙目で悩まれている難易度の高い症例の手術をお願いすることになりました。

『涙道』と呼ばれる涙の通り道が詰まって閉塞している又は狭くなり涙が鼻に流れていかず、いつもハンカチでぬぐっている状態の流涙症は、涙道閉塞や狭窄が進行すると眼脂が出たり、涙嚢に炎症が生じる涙嚢炎を来します。その治療法のひとつが涙管チューブを留置し涙の通り道を拡張していく手術となります。手術では涙道内視鏡で拡大された涙道を写すことができるカメラと鼻内視鏡と呼ばれる鼻腔(鼻の中)を観察できるカメラの2種を用いて確実な手術がが出来る時代となりました。そのカメラの解像度の向上は近年めまぐるしく、当院ではFiberTech(ファイバーテック社)の高解像度10000画素である涙道ファイバースコープCK10を用いて、安全な手術が出来るようになりました。涙は、目頭の上下にある小さい穴(涙点)から総涙小管→涙のふくろ(涙嚢)→鼻涙管→鼻腔へ流れています。この道を涙道といいます。涙道ほぼ全てを内視鏡カメラで確認しながら手術を進めることでより確実にチューブを留置することができます。この手術では、涙道、鼻からのアプローチとなるため、それぞれにしっかりと麻酔をしていきます。涙道側には、目頭付近にある滑車下神経への伝達麻酔と涙道内に直接流し込む麻酔の2種類。鼻側には、噴霧麻酔と麻酔薬を染み込ませたガーゼを鼻腔につめる麻酔をします。これだけしっかり麻酔を効かせていると手術時の痛みはだいぶ軽減されるようです。今回の患者様は難易度が高い症例が多かったのにも関わらず、痛みの訴えをされる方は5症例中2例でした。麻酔がしっかり効いたことを確認したのち、まず涙点拡張針という器材で涙道内視鏡が入るように涙点を広げていきます。広がったところでシースと呼ばれる18Gのインサイトの外筒を加工したガイドを装着して、涙道内視鏡を涙点から挿入してきます。涙道内視鏡の映像を見ながら鼻涙管までカメラを進めていきます。鼻まできたところで涙道内視鏡のみを抜いてシースを残します。その後、このシースをガイドにしながら涙道チューブを挿入していきます。しっかりと鼻までチューブが届いたかという確認を鼻側から鼻内視鏡で確認し、鼻側からシースを抜くもしくは涙点側からシースを抜いていきます。この工程を上下の涙点から行い、確実な涙道チューブ挿入をしていきます。手術時間は、15分~30分程度と言われています。今回は経過の長い方が多い難症例ばかりだったので30分~1時間程度かかりました。この手術はなるべく早めに手術をすることで手術時間の短縮につながり、涙菅チューブ抜去後の涙道閉塞等の再発率も低いと言われています。宮久保先生は症状が長引かないうちに手術をされた方がよいと言われてました。術後2ヶ月経過しましたがチューブが留置している状態で4人全員が涙流消失または涙嚢炎が消退しました。約2、3ヶ月経過し全員チューブを抜去しましたが、皆様良好です。今年に入り当院での同手術を2件行いました。無事に涙管チューブ挿入し終わったのですが、”痛い”という声に鼻腔内麻酔の手技を止めてしまい確実な場所への麻酔が十分ではなかったことが反省すべき点でした。こちらの心構えの問題だったと思い、次の症例に生かしたいと考えています。